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産経新聞 2015年3月31日(火)
新聞記事

HAPPY AGING
「歩く」を究める

HAPPY AGING
「歩く」を究める

人類の誕生以来「歩くこと」で進化してきた人間。最近の研究で、その「歩行」が健康に良いだけでなく、脳の萎縮を抑えることなども明らかになってきた。ところが、歩行は加齢とともに退行し、乳幼児期に回帰していくという。どうすれば退行を食い止め、若い歩行を維持できるのだろう。「歩行開発研究所」(大阪府茨木市)を訪ねた。

「目をつぶって、その場で50回足踏みしてください」
 2月下旬、老人施設職員らを対象に神戸市西区で開かれた「老化予防ウオーキング講習会」。講師の歩行開発研究所主任研究員、岡本香代子さんが参加者約100人に呼びかけた。すると、しばらくしてあちこちで近くのイスにぶつかる人が現れた。中には約1メートル斜めに動き、横を向いてしまった人も。

「大きく動いた人は、体の後ろ側の筋肉が衰え、姿勢が前傾している可能性があります」。香代子さんの説明に会場から溜息が漏れた。 直立二足歩行は、約500万年ほど前、人類の祖先の猿人から始まったといわれ、長い歴史を重ねた人間の根幹的な動作だ。そんな歩行のメカニズムを、香代子さんの父親、研究所所長の岡本勉・関西医科大学名誉教授が筋電図を使って乳幼児から調べた。

生まれて間もない香代子さんをモデルに体全体の12カ所に電極を貼り、歩くときにどの筋肉がどれくらい働くかを30年間継続調査した。横断的調査は1000人にのぼる。その結果、新生児が成人の歩行を獲得するまでいくつかの特徴的パターンを経ることがわかった。

加齢とともに乳幼児期に回帰 まず立つことから始める

生後1カ月ころまでの原始歩行期は、抱いて足を床に近づけると、自然に足踏みをするなど、無意識の歩行動作をする。1歳前後になると一人で立つことができるようになり、歩き始めるが、まだ不安定で、膝を曲げた中腰前傾姿勢、両足間の幅を広げたスタイル。筋電図グラフは多くの筋肉が緊張を示して大きく振れている。3歳ごろから成人歩行を獲得し始め、7歳ころに完成する。グラフはほとんど振れがなくなる。

「ところが、高齢期になると、筋電図のグラフが次第に乳幼児期の歩き方に類似したパターンを示すようになるのです」と、岡本所長はいう。 歩行スタイルは背中を丸めた前かがみの中腰。歩幅が狭く、すり足。歩く速度も遅くなる。筋力とバランス感覚の衰えが原因とみられ、この歩き方だとつまずいたり転倒しやすくなる。そして、高齢者の転倒は骨折から寝たきりに結びつくことも多い。

「たとえば、つまずきやすり足になるのは、スネの前脛骨筋が弱るから。背中が曲がるのは脊柱起立筋が弱るからとわかっています」。岡本所長は、研究データをもとに歩行にかかわる筋肉の動きを細かく分析。その結果、スマホやパソコンの普及で下を向く時間が長い現代人はさらに要注意、と警鐘をならす。

歩行は脳の萎縮を抑える

加齢で筋力が衰えていくのは自然の摂理ともいえるが、普段の心がけ一つでそれを最小限におさえることは可能だ。
「まず立ち姿勢から気を付けることが大切です」。香代子研究員は強調する。歩行は立ち姿勢を保つ、片足で立つ、足を前へ出す、体重を移動する、とさまざまな動作をバランスよく連動させて成り立つ。加齢によりその第一の基本である立ち姿勢がくずれるという。

正しい立ち姿勢は、おなか、おしりを引き締め、ひざ、背中を伸ばし、耳が肩の中心線の上にくる。頭は天井に押し上げる感じ、だ。「電車の中、台所仕事をしているときなど、気づく度にその姿勢をとってください」。その姿勢を保ちながら、なるべく大きな歩幅で腕を大きく振って1日30分以上の早歩きをする。目標は週5日実行だ。「65歳以上の人は、1日最低40分は移動するようにすることも大切です」という。 歩行が病気の予防につながることはさまざまな研究で明らかになっている。なかでも最近注目されているのはアルツハイマー病とのかかわりだ。

英・エディンバラ大学が高齢者638人の73歳時点の脳をMRI(磁気共鳴画像装置)で調べた結果、「ウオーキングを週数回行ったり、体操を続けた人は脳の神経細胞の電気信号を伝える神経線維の減少が少なく、脳萎縮が少なかった」と指摘。英・ケンブリッジ大学の研究では、アルツハイマー病の3分の1は不健康な生活スタイルが原因で、「ウオーキングなどの有酸素運動は脳の血流を改善するので効果的」という。 子供のころから慣れ親しんできた「歩行」に想像以上の力があった。

<歩行老化度チェック>

  1. 背中が曲がってきた
  2. 膝が曲り、腰が低くなった
  3. 両足の横幅が広くなった
  4. 小股で、速度が遅くなった
  5. すり足で、つまずく
  6. 足腰が曲がり、歩くのがしんどい
  7. 不安定で、ふらつく

※1~2項目当てはまると初期段階。
3~5項目は老化進行型。
6~7項目は老人型歩行。

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