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整形外科情報誌「整形爛漫」 2006年6月

「無理をしないウォーキングと散歩のすすめ」

監修:岡本香代子先生
京都大学非常勤講師(医学博士)・歩行開発研究所研究員

新聞記事

運動を習慣化することは、体力・筋力の維持だけでなく、肥満などの生活習慣病の予防・改善にも役立つ。ウォーキングや散歩は、特別な道具もいらず、老若男女だれでも手軽にはじめられる、もっとも身近な運動のひとつである。

ウォーキングで体力と筋力を維持

体力や筋力の維持に日常的な運動は不可欠であるが、運動の習慣をもたない患者さんの中には、何をすれば良いかわからないという人も多い。また、運動というと競技スポーツやトレーニングジムを連想するのか、運動をするような時間もお金もないという患者さんもいる。このような患者さんには、まず「歩く」ことを奨めたい。ウォーキングは全身の血流を良くし、適度な負荷で骨や心肺機能を強化する効果もある。また正しい姿勢で行えば背筋も伸び、足腰の柔軟性や脚部の筋力も増強されて、高齢者にとっては転倒予防の働きもする。転倒による骨折は、高齢者が寝たきりになる主原因のひとつなので、足腰を健全に保つことは、結果的に寝たきりの防止につながる。さらに、中高年以上の慢性閉塞性肺疾患の予防や治療にも、ウォーキングが有効であるとされる。

運動前後のストレッチと水分補給を忘れずに

顔中に汗をかいて必死にスピードを上げて歩いている人もいるが、これは逆効果である。健康維持に効果的なスピードは汗ばむ程度、ふだん歩くのより少し速い程度で良い。背筋を伸ばし、やや大股で歩くと、腕も自然に振れるようになる(Point1)。歩く時間は、1日30分以上(1回10分、1日3回でも良い)、1週間に3日以上が理想であるが、無理は禁物。また、ウォーキングの前後にはウォーミングアップとクールダウンも忘れてはならない。ウォーミングアップやクールダウンには、ストレッチを組み込むと良い(Point2)。 水分補給の指導も大切である。出発の30-60分前に500ミリリットルのペットボトル半分ほどの水をゆっくりと飲み、15~20分ほど歩いたら、のどが渇いていなくても、残りの水を何回かに分けてゆっくりと飲む。夏場は多めに水分をとるように注意する。 障害や高齢などでウォーキングが難しい忠者さんには、運動としてよりも気分転換や日光浴の意味合いが強い「散歩」を奨めるのもよい。日常的に外出する習慣をもつだけで精神状態が良くなることもある。引きこもりがちな患者さんには、口うるさく言うのではなく、診療の中で「そういえば、近所の公園のツツジがそろそろ満開ですね」など、外出の興味を引くような季節の話題などを振ってみるのも良いだろう。

重ね着で温度調節。小銭も持ち歩く

ウォーキングの服装は、動きやすくて軽いことが大切である(Point3)。冬には防寒も考えた服装になるが、厚い上着を1枚着るのではなく、脱ぎ着して温度調節できるように、薄めの上着を2枚重ね着するのが良い。また、脱いだものを手に持って歩くのは、転倒した場合に危険なので、荷物はデイバッグなどの中に入れるようにする。汗をかいたときに身体を冷やさないよう、汗をふくタオルも必要である。 出先で体調がすぐれなかったり、思いのほか疲労したときなどは無理して歩いて戻らず、バスやタクシーなどを使うようにあらかじめ注意しておく。そのための小銭も必要である。また万が一のために、本人の連絡先や、かかりつけの医院の名前を記したメモなどを持ち歩くように指導する。

無理せずに楽しみながら歩く

運動は多少負荷がかかる程度が効果的だが、無理をすると逆効果になる場合もしばしばある。ここまでにあげたウォーキングの方法はあくまでも基本であり、とくに高齢の患者さんの場合は、各人の体力や障害の度合いに応じた指導が必要になるが、ウォーミングアップやクールダウン、水分補給、服装、そして万が一のためのメモの所持など、安全にウォーキングを楽しむための方法は共通である。 体力維持のためには運動の継続がいちばん大切であり、そのためには「急がない」「無理をしない」「義務感をもたない」ことがポイントになる。楽しみながらウォーキングや散歩をするために、公園や植物園などで自然に触れることを目的としたり、写真を撮りながらのんびり歩くなど、その人なりの目的がもてるように奨めると良い。

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